日時2019年 9月 14日(土)14:00〜16:30
会場 :中大付属中(工作室)


内容 教材づくりは子どもの作業レベルを見極め事前の試作検討を入念に


  今回は産教連主催の夏の全国大会後はじめての定例研究会である。この日は、木材を利用してものづくりを進める場合、失敗せずに精度よく仕上げるためには、教材の選定・材料の選択・設計段階での工夫などで、教師側としてはどのような点に注意を払う必要があるのか、検討してみた。問題提起は会場校の禰覇陽子氏で、木材加工で製作させようと考えている教材の試作品を目の前に置き、参加者にいろいろ意見を問うていた。

@ どのような視点から木材加工の教材検討を進めるか        禰覇陽子
 まもなく始める木材加工の教材を検討中である。その教材とは、あまり製作例がないと思われる “額縁”(写真1)である。美術科で制作した絵画を完成後の額縁に入れて飾る(写真2)という計画を立てた。
 木材加工の学習を始める前に、「ここで何を学ばせるか」という点を明確にしたうえで製作に取り組ませたいと常々考えている。「科学技術が社会を変えていく」ということをよく耳にするが、社会的価値に伴って科学技術が発展するという流れのほうが自然な気がしている。現在の子どもた ちは、昔に比べてものづくり(製作)が生活の中に根づいていないということを強く感じている。その証拠に、今の子どもたちには作ったものを持ち帰って積極的に使おうという気はさらさらないよ うだ。便利な世の中になった現在、手作業でものづくりをする意義をどこに見出すかを考えたとき、作ったものに付加価値をつけることではないかと思い至った。
 ここで、技術科での教師の指導を振り返ってみると、製作品の精度を上げるために技能の向上をめざす取り組みがよく行われていることがわかる。「このようなものを作って何の役に立つのか」とか、「将来、大工になるわけではないから、そんなに上手にできるまで取り組む必要はない」などという、子どもたちの疑問や反応を日々の授業の中で強く感じている。ものづくりをする意味として、技能の向上以外にも製作過程を大事にすることがあげられると思うが、まだあるのかを検討願いたい。

 問題提起を受け、討議に移った。製作実習で何を大切にするかという点に関しては、「ものづくりで“技能の向上”をめざすと言うが、授業で1回実習をやったぐらいで技能が上達するはずはない。したがって、技能の向上を学習目標の第一に掲げるのには無理がある」、「どこを観て評価するか、評価のポイントを製作開始前に教師側からあらかじめ伝えておくようにする。そうすることで、生徒は一生懸命に実習に取り組むし、また、できあがった作品に愛着も湧いて来ようというものだ」、「提示された教材はかなり難易度の高いものに見える。しかし、描いた絵が額縁にぴったり収まれば、正確に加工できている証しとなり、自分の作ったものにさらに愛着が湧いて来よう」などというものがあった。
 今回提示された教材は接合部がすべて“相がきつぎ”になっており、それが全部で4箇所あるので、ほぼ同じ加工を8回繰り返すことになり、今の子どもたちにとっては相当難しい作業になることが予想される。この点については、多くの参加者が指摘していた。そこで、それを回避する工夫の例を参加者がいくつかあげていた。「とにかく、相がき部を半分の2箇所に減らして、その部分には別の接合方法を考える。第一の方法は、波釘(片側に刃先があり、波打つ形状の釘)を使う。第二の方法は、ステープル(ホチキス針に似た形状の釘)を使う。第三の方法は、コーナー金具で固定するか、三角形状の補強材で固定する」というのが、参加者のあげた方法である。
 禰覇氏は、討議の最後に、「『これを学ばせるのだ』という教師側のこだわりも大事にしつつ、いただいた意見を参考に、もう少し接合方法についての検討を加え、授業に備えたい」と述べていた。
   


研究会に対する問い合わせ先

野本 勇