日時2017年 1月 21日(土)14:00〜16:30
会場 東京学芸大附属世田谷中学校

 
 素材からの手作りをとおして食品本来の味を伝え継ぐ


  このところ第三土曜日の午後に研究会を行ってきているが、今回も同様である。
 学習指導要領の改訂にかかわる中教審の審議状況については、昨年末に答申があり、このときの会議の配付資料をもとに、次のような報告があった。「今年度(平成28年度)末までに学習指導要領改訂がなされ(高校は1年遅れで改訂)、平成29年度は改訂内容の周知・徹底にあてられる。平成30年度より移行期間、平成32年度より全面実施となる(中学校の全面実施は平成33年度より)。標準授業時数については、中学校にはそれぞれ35時間増える。 変更がなく、小学校3〜6年がまた、小・中学校ともに『各教科の授業について、年間35単位時間を超える部分について、15分程度の短い時間を単位とするなど、柔軟な時間割を編成して実施することができる』とのただし書きがつけられているので、注意が必要である」。
 さて、この日は小麦粉を利用した調理をテーマに、うどん作りをとおしてどこまで小麦の性質を学ばせることが可能かを検討してみた。小麦粉を使った調理の解説とうどん作りの手ほどきを野本惠美子氏に、調理器具や小麦粉その他の準備を野本勇氏にそれぞれお願いした。
 まず、授業時に使用したワークシート「小麦粉を使った調理」をもとに、参加者とやりとりをしながら、野本惠美子氏が簡単な解説を行った。小麦粉は、含まれるタンパク質の量によって強力粉・中力粉・薄力粉に分けられ、うどん作りには中力粉を使う。「うどん以外に、小麦粉の用途は?」との野本氏の問いかけに、「パン、スパゲティ、天ぷらの衣、……」などと、参加者からはかなりの数の食品名があがる。   授業で同じ問いかけをしても、生徒があげる食品の数は少ない。「ふだん、自分たちの食べている食品の素材が何なのかについてはほとんど知らないのが現実」と野本氏は言う。野本氏は、小麦粉に含まれるグルテンのはたらきについて解説した後、「日本で米食が定着し、パン食が定着しなかった理由は?米は炊飯して食べるが、小麦は炊飯ではなく粉食調理されるのはどうして?」との問いに対する答えを説明する形で、日本における小麦の自給率などにも触れながら、小麦粉に関する 解説を締めくくった。
 いよいよ手打ちうどん作りである。用意した小麦粉は4人分で、強力粉200g、薄力粉200g(または中力粉400g でもよい)である。作り方の概略は次のとおりである。
@食塩を水に溶かす。(水200aに対して食塩10g)
A食塩水を入れながらよくこねる。(写真1 写真2)
Bぬれふきんをかけて30分ほどねかせる。(授業で行う場合は、ねかせている時間の使い方が難しい)
C手で前後左右に引っ張り、3cm ほどの厚さにする。
Dふり粉をまぶしながら麺棒で広げる。(写真3 )
  E麺棒に巻きつけてころがしながら、厚さ2〜3mm にのばす。(写真4)
F薄くのばした生地をS 字状にたたんで、3mm 幅に切る。(写真5)
G大鍋にたっぷりの湯を沸かし、7〜8分ゆでた後、ざるにあげる。(写真6)
 早速、できあがったうどんに野本氏特製のだし汁をかけ、薬味をのせて試食する。手打ちうどん独特の歯ごたえを感じつつ、味わう参加者たち。食べながら、いつものごとく意見交換が始まる。パン食・ご飯食を含めた学校給食の話から、食の安全に関する話に至るまで、意見は広範囲にわたったが、「素材からの手作り」という点を中心に、おもだった意見を以下に記しておく。
   「今は手作りしたものと同じものが、簡単に、しかも安価に入手できる世の中だから、何も手間ひまかけて手作りすることはないという風潮なのは残念だ」、「授業時数の関係から、手作りする時間を生み出すのは容易ではないが、素材から手作りするよさを何とかして体験させてやりたい」、「近頃は本物の味を知らない子どもが多くなってきてできあがったうどんを試食する参加者たちいるゆえ、手作りをさせることがむずかしくなってきていることも事実である」。
 
  

  


 
野本勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp