日時2013年5月11日(土)14:00〜16:00
会場 東京学芸大附属世田谷中学校)
(技術室)

内容 加工学習での基礎事項を確認する


 5月の定例研は前回と同じ会場で行ったが、当日はあいにくの雨模様の天気で、参加者は少なめであった。今回は、「加工学習の基礎を学ぶ」と題して、加工学習で押さえるべき点は何か、工具の使い方と教材の両面から検討してみた。実践報告と問題提起は亀山俊平氏 (和光中学校 )と会場校の諏佐誠氏である。
@「木製テープカッター」製作上の工夫と今後の課題亀山俊平 野本勇氏(都品川区立荏原第六中 講師 )が長年取り組んできた「木製テープカッター」の製作を、自分なりの工夫を取り入れながら、はじめて実践してみた。取り組んでみて、課題もいくつか見えてきた。この教材を取りあげた意図は、製品として愛着が持てるものを作ったということを感じとらせると同時に、価値ある有用なものを生み出したという実感も持たせたかったからである。材料として厚さ 15mmのセンの板材 (材料費は 800円程度 )を用い、表面はオイル仕上げとした。授業では、市販品をもとに、製作物に求められる機能を検討させ、必要な寸法や形状を決めた。全員同一の寸法・形状ではなく、自由設計できる部分も何箇所か設定しておいた。取り組ませてみて、幅広タイプ (ガムテープ用 )の製作はむずかしいと改めて感じた。
糸のこ盤を自由に使えるようにしておくと、切断作業をすべてこの機械でやろうとする傾向が見られるので、その使用の功罪を考えたい。部品の接合は木工用接着剤のみで可能だが、あえて釘打ちによる固定もやってみた。これは、一斉授業のなかで大勢の生徒に作業させたとき、作業途中の作品の保管場所との関係からであった。
野本氏も、持参した授業プリントを使いながら、「一目見れば、正確に加工出来たかわかるようにして製図の学習の段階でポイントを押さえておくよう工夫している」との補足をされた。亀山氏も、組立後の寸法のずれが確実に修正できるよう、作業台の上面に荒目の紙やすりを貼りつけておき、組立後の作品をその上で擦って磨かせることをしているとの補足をされた。「亀山先生が段ボールを使って原寸大の作品見本を作らせ、寸法確認をされているのは、失敗を未然に防ぐ意味からもすばらしく、見習いたい」「釘打ち用の下穴あけにはキリを使わせているとのことだが、最近のキット教材の説明書にはボール盤で釘打ち用の下穴をあけるような記述がなされている。無理にキリを使わせないでもよいのではないか」などの意見が出された。  

A木工用の工具類の正しい使い方を押さえた指導諏佐誠
加工学習は1年で取りあげ、板材を使って小物入れを製作させている。製作のなかで使用する木工用の工具の特徴と使い方をきちんと学ばせたい。取りあげる工具類としては、さしがね・のこぎり・かんな・キリ・げんのうがそのおもなものである。教科書や資料集を使いながら、工具使用のポイントや使用上の注意点を指導したい。
「工具の使い方をきちんと指導するならば、職人が使っている場面を見せるなどして、正しい使い方を意識させることが大事。ただ、指導時間に限りがあるので、どの程度まで習熟させるかは指導する教師の判断でよいのではないか」「職人がやるような使い方まではやらなくてもよい。それよりは、各種の工具に共通して大切な使い方のポイントを意識させるような指導が大事な のではないか」「のこぎりびきで言えば、けがき線に沿ってまっすぐに切ること、切り口が直角になっていることが大切。それがうまくできない生徒に対しては、うまくできた生徒と同レベルに近づけるようなジグを工夫するのも必要である」などの意見が出された。また、「技術室の腰掛けを横倒しにして、その上に置いた板材に片足を乗せ、のこぎりびきしている図が載っている。このやり方よりも、木工万力に板材を固定し、しゃがみ込むような姿勢で切るほうが現実的。そんな図もほしい」「釘打ちの場合、打ちつけた釘が板からはみ出たとき、それがすぐに作業者にわかるように、板材のささえ方や作業者の立つ位置まで指導しておいてから作業に取りかからせている。このようなちょっとした作業上 のコツなども載せておいてもらえるとありがたい」などと、教科書の記述のしかたに注文をつける参加者もいた。


野本 勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp
金子 政彦 mmkaneko@yk.rim.or.jp