日時2012年5月12日(土)14:00〜16:00
会場 麻布学園(技術・加工室)
港区元麻布2-3-29 

内容 「テープカッターの製作をとおして木材加工の基礎を学ぶ」

新学期が始まってからほぼ1カ月経ったが、学校現場はかなり忙しい。研究会が始まる前、会場内で参加者たちが交わす言葉の端々からそれが感じられた。忙しいにもかかわらず、ここ最近は参加者が多く、嬉しい限りである。
さて、今回は木材加工を取り上げ、製作時に使用する工具の使い方のコツや指導上のポイントを、実際にテープカッターを作りながら検討してみた。材料や工具類の準備と製作指導を会場校の野本勇氏にお願いした。
写真 セロハンテープ用(左)とガムテープ用(右)
@製作時の失敗をカバーできるテープカッターづくり野本勇(麻布学園) 1年時に取り上げる木材加工では、材料としての木材の基本的な性質や木工具の取り扱い方について、ひととおりの学習が済んだところでテープカッターの製作に入る。「少しでも製作後に使ってもらえるような作品にしたい」、「実習では、工具類をふんだんに使わせたい」との強い思いから、この教材を選定している。のこぎりびきは横びきが中心で、組立には釘を使わず、木工用接着剤のみで接合するようにしている。厚さ15mmのパイン集成材を用いて作るので、できあがった作品は重量感のあるものになる。また、製作経験の乏しい現代っ子は失敗をいやがる傾向があるが、多少の失敗があっても、修正が利くような設計にしてある。これによって、仮に失敗したとしても、使用上差し支えのない作品ができあがり、達成感・満足感を味わう生徒が多くなった。 用意された材料を使って、野本氏の指導のもと、参加者は製作を進めていった。作業時間短縮の意味もあり、野本氏があらかじめ下加工をしてくださっていたので、2時間ほどで完成することができた。この日は塗装はしなかったので、完成品を参加者が持ち帰った後、各自でやってもらうこととした。 今回はセロハンテープ用とガムテープ用の2種類のテープカッターの完成見本と材料が用意されていた。 写真のセロハンテープ用とガムテープ用この2種類のテープカッターは、基本形が同じで、一部の寸法のみ異なるだけである。ガムテープ用のテープホルダーはセロハンテープを2つ同時に取りつけられるような構造(写真)にしてある。多くの 参加者はセロハンテープ用を製作していた。「今日作ったものは学校で自分用として使うんだ」と言って、完成作品を大事そうに持ち帰った参加者もいた。
指導者が実際に製作してみることで、生徒が失敗しやすい箇所や指導上のポイントがよくわかってくる。現に、テープホルダー部分の加工で失敗してしまった参加者もいた。テープをセットする場合には、テープを広げるような感じで、やや大きめに作ったホルダー部に無理やり入れる。これにより、テープとホルダー部が一体化する。したがって、テープカッターの構造部をやすりで削りすぎたり、丸いデザインにしたりすると、テープの固定がうまくいかなくなってしまう。
  
  写真テープカッターづくりに取り組む参加者

A大学生に杉丸太材からの作品製作に取り組ませる試み藤木勝(東京学芸大学) 技術科教育全体を貫く重要な視点として、「いい加減なものは作らせない」ということがあげられる。大学での教科教育としての「カリキュラム開発論」を担当するにあたり、この基本理念を何とか体得させたいと思い、生の杉の間伐材を使い、これを加工して卓上ペンケースに仕立て上げることを計画し、実践に移し始めた。この題材を取り上げる意義として、学習指導要領の「技術・家庭」技術分野の「A材料と加工に関する技術」にかかわる指導内容が網羅されていることがあげられる。作品完成後に「A材料と加工に関する技術」の指導計画を作成し、レポートとして提出することを課題とした。ここで使用する丸太材は、直径が15cmほどの皮つきの未乾燥材である。 この報告内容に対する討議は時間の関係から行わず、簡単な質疑だけにとどめた。実践を終えてから改めて報告してもらい、そこで討議することにした。
野本 勇(麻布学園・技術科) isa05nomoto@snow.plala.or.jp
金子 政彦 (大船中学校) mmkaneko@yk.rim.or.jp