1月定例研究会報告
麻布学園1月14日(土)14:30〜16:30
非常時用簡単レシピによる調理実習を体験する

 私立校の麻布学園では、中学校段階の家庭科においては、調理実習の時間が十分ではないので、今後は、調理実習に時間を割いて行いたいと考えているとのことであった。 今回の研究会では、高校1年の生活総合(家庭科)で実践しているものを取り上げ、参加者みんなで実際に調理してみた。指導するのは会場校の齋藤美重子氏である。 この日のテーマが非常時の調理ということだったので、取り上げた献立はすいとん(小麦粉団子入り汁物)と乾物サラダである。当日は、新年会をかねて、できあがったものをその場で食べながら、討議を進めた。参加者の一人、森明子氏(東京都江戸川区立中)が、授業で取り上げた“手作りのタオルの犬”(『技術教室』2011年12月号を参照)と“よもぎ入りの草団子”を関連資料とともに持参され、会場で熱く語る姿が印象に残った。
 今回は、調理用具や食材が満足にない状況下の非常時に、いかにして調理を進めるかにポイントをおいて実習を行った。このような場合、手元にある食材を使い、洗い物を少なく調理を夫する必要がある。むろん、食中毒にならないように配慮することも大事である。戦中戦後の食糧難の時代を知っている者からすれば、すいとんにはそれなりの思い出があるが、そんな時代を知らない今の子どもたちはできあがったすいとんを「うまい、うまい」と言って食べていた。齋藤氏は、実践を振り返って述懐していた。
 今回のすいとんは、煮干しと昆布でだしをとり、酒・醤油・味醂で味つけをした。具材としてジャガイモ・ニンジン・大根・ゴボウ・シメジ・長ネギ・油揚げ・鮭缶を使った。小麦粉団子は、水(今回は牛乳を使用)と小麦粉を混ぜるのにポリ袋を使った。ポリ袋の端をカットし、そのまま絞り出して、沸騰している汁に団子を落とし入れれば、その後の後始末も楽である。乾物サラダは、乾物のワカメと切り干し大根をビニル袋に入れ、水を加えて袋の口を閉めてしばらく放置する。乾物がもどったら水を切り、ゴマ・ちぎった焼き海苔・缶詰のコーン・調味料を袋に入れ、手でよくもみこめばできあがりである。
 齋藤氏の説明によると、今回の実習で取り上げた献立は、1単位時間の授業のなかで実施するということで計画したものとのことだった。
 その後の食べながらの討議のなかで出された意見からおもだったものを記す。
 「お茶は急須で入れて飲むものではなく、ペットボトルのお茶を電子レンジでチンして飲むものというのが今の子どもたちの意識である。だからこそ、食に関しての正しい知識を授けることが大切になってくる」「『ゴマをする』という言葉があるが、すり鉢などは今の子どもたちはほとんど知らないのではないか。海苔に裏表のちがいがあることすら知らない」「実習をやってみて、体験で身についたものはなかなか忘れないのに対して、机上で覚えたものは定着しないということがよくわかる」「今回の調理でジャガイモを使ったが、同じジャガイモでも、煮くずれしやすいものとそうでないものがある。このように、実習で使う食材に関して、品種による特性のちがいについて、ひとことでもよいから触れたい。栽培学習と食物学習をつなげて実践しようと考えるのなら、なおさら意識させたい」「昨年(2011年)の東日本大震災以来、食材の放射能レベルに敏感になってきているので、栽培学習や食物学習ではこうしたことを意識して実践にあたらねばならない」